【ジョージアで登山!】厳冬期「カズベキ山 5054m」(敗退)
私は何て愚かだったんだ。
いつも世界各国の最高峰ばかりに目を向けていて、ジョージアにこんなにも美しい山があるなんて知らなかった。
キッカケは仲良くなった日本人の旅人が、ジョージアのカズベキ地区にある有名な天国に一番近い教会「ツミンダ・サメバ教会」に行った時に撮ってきた写真だった。
その写真の中にとてつもない存在感で荘厳にそびえていた「カズベキ山」を見たのだ!
その美しく厳しさも見えるこの山に「登りたい」と一目で魅力されてしまった。
しかし氷河を持つこの山は、夏でもアイゼンやピッケルやロープを要する難しい雪山。そして現在季節は真冬。
散々悩んだ結果、
高鳴る気持ちを抑え切れずにありったけの登山道具をザックに詰め込み。
カズベキ山の登山拠点となる麓の町「ステパンツミンダ」行きの乗り合いタクシーに飛び乗ったのであった!
さて、皆さん突然カズベキ山と言ってもなんのこっちゃかわからないかと思いますので軽く説明します!
・カズベキ山概要・
ジョージア語でムキンヴァリ(氷の山)という別の名前をもち、
ロシアとの国境を跨ぐコーカサス山脈にそびえる標高5,047メートルの成層火山で、ジョージア国内では三番目に高い山。
そして夏でも溶けることのない氷河のあるとても気温の低い山なので、
冬期はエベレストなど超高山の登山トレーニングに使われる山らしいです!
分かりにくいですが「カズベキ山」登山のマップはこちら
夏の通常ルートで登り4日、下り2日
・第一小屋で一泊
・第二小屋で高度順化を含め二泊
・山頂アタック後に第二小屋でもう一泊
・第二小屋から一気に下山
がこの山の登山セオリーらしいです!
今回は時期が真冬だったので全く見当がつきませんでした。
この時の登山を断片的ではありますが動画にまとめていますのでよかったらこちらもどうぞ!
カズベキ山 5054m 厳冬期 単独登山に挑戦 そして 敗退!(Kazbegi Mountain on winter and give up)
1日目(晴天)
色々な地区に長距離バスやタクシーが出ているディドゥベ駅に朝8時に到着。
本来ならここからステパンツミンダ行き定期バスが出ているのだが先日の雪で運休となっていた。
少々高いが仕方なく乗り合いのタクシーで向かうことにした。
タクシー乗り場に行くと、タイミングよく他の乗客が待っていて全3名
1人35Gel(約1400円)を支払い出発した。
しかし、トラブルが発生!
目指していたロシアとの国境の町、ステパンツミンダの40km手間の峠で雪崩があったらしく通行止めになっていた。
どうしても先に進めずに近くのスキーリゾート地「Gudauri グダウリ」で降ろされてしまった。
しかも運賃はしっかりと取られて!
この町からスキー用のゴンドラとタクシーでステパンツミンダにたどり着けると運転手に言われ、
訳がわからないままゴンドラのチケットを買い、
スキー客に混じり半信半疑でスキー場を上がって行った。
突然ですが「ステパンツミンダ」という地名、なんか可愛いですね。
峠の山頂に着くとなんとそこから反対側にもリフトが出ていた。
無事に雪崩で通れなかった山の向こう側に降りてそこからタクシーを拾い、何とかステパンツミンダに到着!
ステパンツミンダのスーパーで数日間の食料を買い込んで、
街にいつも待機しているであろう高台にある教会観光用の4WD(バンパーの取れた日産 X-TRAIL)に飛び乗った。
登山口までにかかった交通費
・乗り合いタクシー35
・ゴンドラ20
・タクシー20
・4WD タクシー40
計115Gel(約4500円)
通常ならトビリシからステパンツミンダまで一番安い乗り合いバスで10Gel(約400円)で来れるので、予定の10倍以上の予想外な痛い出費となってしまった(泣
さて、
登山口についたが先日の大雪で積雪も深く、時間もだいぶ遅くなってしまったので登り出すか悩んだが好天はそう何日も続かない!
急ぎ足で第一小屋の
「AltiHut 3014」に向かった。
幸い雪面にかすかだが先行パーティの足跡が残っていたので、汗だくになりながらも迷う事はなく日没前に到着。
キャンプする予定だったが冬期用の小屋が開いていたのでありがたく使わせてもらった。
他にチェコとポーランドから来ている登山者2チーム4名がいた。
さて、
真冬の3000mだ。
寒さは覚悟していたがやはり寒い!
全てがあっという間に凍ってゆく。
ポーランド隊が気温計を持っていた。
「-20度」
バナナで釘が打てるな。
2日目(強風)
早朝6時に起床。
本来ならもっと早い時間に動き始めたい所だが、なにぶん寒すぎて寝袋から出られなかった。
8時に日が昇る、気温も上がる。
山からの吹き下ろす風が強い!
雪煙がまっている。
(雪煙・風で舞い上がって、煙のように見える雪。)
小屋近くにおっかない雪庇も出来上がっていた。
(雪庇・山の尾根の風下がわに、庇(ひさし)のようにせり出した積雪。)
他の登山チームも出発を遅らせたため、皆安全を意識してか強風の中、全チームがお互いを確認出来る距離間で次の小屋までの道のりを歩いた。
5時間歩き、全員何とか第二小屋の
「Bethlemi hut 3650」に到着。
小屋に到着すると緊張が切れたのか突然の腹痛に襲われた。
山小屋の外にあるトイレに行くが尻を出すと厳しい寒さでSiriが凍った!
痛い!!
↑派手なペイントの第二小屋、風で飛ばされて小屋の周辺は雪があまり無かった。
↑雪山にジョージア名物の茹でるだけの冷凍ヒンカリは溶けることが無いので相性抜群だ!
3日目(強風)
6時起床。
体調は良好だ。
天気予報では強風の予報だったが朝は穏やかだった。
一週間先まで希望の見えない天気予報と、想像以上の低温に心折れかけていたが、
今日の天気予報は風は強いが悪くはなかった。
望みがあるかもしれない。
ここで引き返すか登るか迷う自分に
「お前は何のために来たんだ!」
「たとえ山頂にたどり着かなくてもお前は登れ!」
と自分に喝をいれ、朝食にシリアルとコーヒーを胃に突っ込み、1人カズベキ山が抱く氷河を歩き出した。
正直怖かった。
こんなところで怪我をしても誰も助けに来ない。
クレバスに落ちたら多分孤独に死ぬだけだ。
氷河の雪が深い場所を抜ける時、隠れたクレバスがあるんじゃないのかと恐怖で尻の穴が縮んだ。
小屋から3時間程登ったあたりに最後の平らなキャンプ可能地があり、そこに座り水筒に入れてきたコーヒーを数口だけ飲んだ
すると次第にカズベキ山の向こうからどす黒い雲が迫って来ているのが見えた。
雲の動きは目で見える程早かった。
ここまでか・・・
悔しい気持ちと、
一応は自分が想定できる限界まで上がって来れたという充実感とが交錯して複雑だった。
登頂を諦めて座っていたらとうとう雲に呑まれてしまった!
さっきまで大人しかったカズベキの風は急に荒れ出し牙をむいた。
置いていた荷物が飛ばされる程だった。
突風で転ばないように、そして隠れたクレバスに落ちないように慎重に急ぎ足で小屋まで歩いた。
小屋の近くまでくると近くに4000mくらいの斜面を登る2人のクライマーが見えた。
チェコの2人が高度順化をしているのだろう。
この天気だ、すぐに降りてくる。
↓冬期、登山者が自由に使える部屋。
これから悪天が続いて第二小屋に足止めになるのは嫌だったので、2人に書き置きだけ残して自分は第一小屋まで降りた。
登頂したわけでもないのに、強風の中の長い下山で身体は疲れ切っていた。
なんて酷い顔だ(笑
引き続き風で飛ばされないように慎重に山を下りて、先日使わせてもらった第一小屋にある無人部屋がまだ空いていたので一泊させてもらった。
4日目(吹雪)
やはり天候は荒れた。
強い風が夜通し小屋の壁を叩くのでまるで眠れなかった。
この小屋には冬期自由に使っていい部屋が2つあり、もう一つの部屋にはノリにまかせて登って来た若いスノーボーダーの2人がいた。
彼らは調理器具を何も持っていなかったので朝食にフリーズドライの山食とコーヒーを作ってあげた。
今から自分は降りるから一緒に下山するか?
と聞いたが
「もう少し登りたいけど自分達の装備じゃ無理そうだ!
眠いからもう少し寝てから降りるよ」
と言い2人は小屋に残った。
元気で勢いのある2人だった。
第一小屋から登山口までは通常3時間あれば十分おりられるのと聞いていたが、
吹雪で雪が深くなり、トレースは全て消えていて下山も大変だった。
途中一人の登山者にすれ違い、水筒に入れた珈琲を二人で飲みながら少しだけ話した。
彼はネパールの登山のために今日から一週間この山に籠るそうだ。
その後下山中には彼以外は誰にも会わなかった。
所々腰まで埋まってしまう雪のなかをひたすら一歩一歩雪を圧雪して進み、登山口に戻るまでには平均コースタイムの倍の6時間も経っていた。
登山口は高台にある有名な教会の駐車場にある。
山の上の悪天が嘘のように麓は晴れていて何グループかの観光客がいた。
駐車場の片隅に座って休んでいると、小屋で会った若者が自分のトレースを使って降りて来てくれた、無事でよかった。
彼らはロシア語が話せたので、教会から戻りのタクシーに交渉して他の観光客の乗って来た4WD(綺麗な三菱デリカ)に1人10Gel(約400円)で麓の町まで乗せてもらった!
本当はその日のうちに、首都のトビリシに戻りたかったが最終バスに間に合わず、 第一小屋で出会った彼らと無事を祝っての祝杯!
そのままステパンツミンダの彼らが泊まる安宿を紹介してもらった。
装備は甘いが元気で熱い奴らだ!
そんなかんなで今回のカズベキ山の登山は、最高到達標高約4300mで悪天候と氷河にやっつけられた悔しい思いをしましたが、この登山はロシアの最高峰、そしてヨーロッパの最高峰でもある「エルブルス」に挑戦するための準備運動と自分にいいきかせました。
確かに高所で数日間過ごせたので、高度順応と体慣らしの面では良い結果だったと思います。
さあ、
次の高気圧を狙ってロシアの最高峰エルブルスの登山に備えたいと思います!!
あ、こらっ牛っ!
ゴミ箱をあさらないの!!
・糸冬・