【カナダ】アサバスカ山登山 ~Mt'Athabasca 3491m (Canada)~
数あるルートの中で選んだのはコレ!
線は引いていないが画像左側のなだらかな場所が山頂、
今回はノーロープ、ソロであるためクライミング要素のあるコースを避けたのだが氷河歩きが長い。
装備品
片方は借り物のピッケルのためハンマーが無くて笑える、
食料
これに食パンにチョコレートを塗ったやつとオレオみたいなビスケット10枚を追加した。
4:00起床、天候悪く出発を遅らせテント内で待機、
7:00に天候回復、最寄りのキャンプサイト『Ice Field Camp』を出発、
コロンビア氷河付近の山を登山するならココが拠点となる、
登山口まで約2㎞、アスファルトを歩くこと30分恐らく登山具と思われる所に到着、アサバスカ山の入り口はこの氷河観光用のバス停留所が目印、
・
登山口と言っても看板などは何もなく、何となくの踏み跡(トレース)があるのと白い木の棒が立っているだけだ
・
7:30入山、しばらく岩場、ガレ場の道を踏み跡とたまにあるケルンを頼りに登って行く。
遠くで見ても気にならなかった氷河までの道も中に入ると険しい道だった、晴れていれば迷う事は無いだろう、
最初の難所、
ロッククライミングではないが、傾斜がキツイ上に岩が朝露で霜が降りているので神経を使った、
9:30氷河取り付きに到着、
写真下側が岩場、上側が氷河、氷河に乗る際は岩場と氷河の間にかなりの隙間があるので注意が必要だ、
氷河に入ると、遠くからでは見えなかったクレバスがかなり口を開けていて気が引き締まる、それよりも怖いのが今朝まで降っていた雪で隠れた『ヒドゥンクレバス』、
ここから先はいつクレバスに落ちてもおかしくない地雷原を1人で歩く、
先日から降り続いた雪は氷河の氷の上にしっかり積雪していた、
一歩、一歩、自分の行く道にクレバスがないかピッケルを刺して確認しながら歩く、
下にクレバスがある場合ピッケルの刺さりが軽くなるのだ、だかこれも俺のピッケルの長さ60㎝を越える雪だと通用しない、
とても根気がいる、そして神経を使う作業だ、
見えているクレバスや、
ヒドゥンクレバス、
これらを慎重に慎重に回避しながら登ってゆく、
時に一つのクレバスを避けるのに大きく迂回を余儀なくされ、かなりの時間をロスした、
高度にして600メートル程か?
普通に歩ければ1時間もかかならいであろう高さに3時間もかけてしまう、
見えてるクレバスの数は無数、
見つけたヒドゥンクレバス4つ、
踏み抜いたヒドゥンクレバス4つ、
12:30氷河を抜け、核心部と思われる山頂稜線までの傾斜に取り付く、
予想していた通り斜面には雪があまり無くアイスの個所がほとんど、
ピッケル2本で、ダガーポディションで標高を詰めていく!
だがここで油断があった、これは俺の大きなミスだ、
山頂までの傾斜は恐らく25°〜50°もうクレバスは無いだろうとペースを上げていた、
だが、クレバスはあった!
キックステップで踏み込んだ足元の雪が明確に今までと違った、
「マズイ!」
思わず口にした、
その時にはもう遅かった、ペースを上げていた俺は足元に体重をあずけきっていたのだ、
クレバスに落ちるというのは、ストン!と落ちて行くケースは珍しいと思う、
大抵はまるで蟻地獄にでも落ちてゆくようにズルズルと雪の中に引きずり込まれていくのだ、
あがいてピッケルを周辺に刺し続ける、
全身が、クレバスに隠れる寸前にクレバス入り口のアイスに片方のピッケルが効いた、
「助かった?」
1人呟いた。
恥ずかしい話、足の震えが止まらなくすぐにクレバスからの脱出は出来なかった、
幸いにもクレバスが少し斜めに空いていた事と、入り口でピッケルが効いたため、奥までの落下は免れたが、あれが縦のクレバスだったらタダでは済まなかっただろう、あんな狭い中で手探りヘッドライトを出すのは難しい、
脱出後クレバス入り口にて、
カメラが雪まみれになってしまい上手く撮れていないね、
テルモスから朝用意した紅茶を飲み、気持ちを落ち着かせた、
落ちたクレバスを覗くと雪の白から氷の青、そして闇へと続いていた、
しばらくまだ登るかどうかを考えたが山頂稜線はもう目の前に見えている、
今まで以上に慎重にゆっくりと登って行く、
もう少しで稜線、
稜線に出る少し手前に別ルートからの目印かゾンデ棒が一本刺さっていた
14:30山頂へ続く稜線に到達、
午前中は晴れていたが天気は確実に崩れてきていた、それとこの日は風が強く山頂稜線は直立する事が出来ない程だった、
自分の中で何があっても15:00に下山を開始する!と決めていたのもあり、
14:45下山開始、
最高到達点3370m
登頂後は別の氷河歩きが少ない『AAコル』ルートで下山予定だったが来た道を戻る事になる、
氷の傾斜は下の方が遥かに危険で神経を使う、
慎重に慎重に降りていく、強風が巻き上げた雪で自分のトレースは消えかけていた、
下山中では2つヒドゥンクレバスを見つけた
慎重に跨ぐ、
もう命の危険がないあたりまで降りて氷河の上に乗った岩で食事を取る、
風が強いから岩陰で湯を沸かす、
16:30氷河脱出、
もうクレバスに怯えなくてもいい、登ってきたガレ場をてくてくと降りて行く、
17:30登山口に戻る
登山口付近に自分がいた氷河から続く小川が流れていた、
生きて返してくれたこの偉大な氷河を少しでも感じたくて、冷たい水に手を入れた、
顔を洗い、氷河の水を飲んだ、
この時、自分でも何処だか分からないが体の奥底から生命のエネルギーの様なモノが込み上げてきた感覚を感じた、
18:00ビジターセンターにて登山用具をしまい、ウェアを着替えて1㎞離れたキャンプ場に戻った。
山頂には立たなかったがとても充実した登山であった、この登山で感じたこと学んだことは多い、
そして『氷河』と命懸けで戯れた、
今回の登山で一つの教訓が出来る、
「氷河は二度と1人では歩きません」
ありがとうアサバスカ山、
とても綺麗な山だった。
・糸冬・